ミスラン三冠王の『屍人荘の殺人』を読んでモヤった4つの理由を挙げてみる

  

スポンサーリンク

新人で三冠という快挙!

  
記念すべき2018年最初の一冊は、ミスラン三冠王となった今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』から。
  
ちなみにミスランはミシュランの誤植ではない。「ミステリーランキング」の略である。
  
この作品、まず「このミステリーがすごい!」でぶっちぎり一位。「本格ミステリ・ベスト10」でも一位。「週刊文春ミステリーベスト10」でもやっぱり一位。で、なんと三冠を取っている。
  
「このミス」、「本ミス」、「週文」、これらはミステリファンなら必ずチェックする、毎年恒例の年間ミステリランキングの代表である。が、この三つで一位が被ることは滅多にない。
  
過去にそんな快挙を成し遂げたのは東野圭吾氏と米澤穂信氏の二名のみである。そしてこのお二方はランキング常連の大御所作家である。
  
もっと正確に言うと、「このミス」、「本ミス」、「週文」の三つで過去に三冠を取ったのは東野氏だけだ。そう、ミステリファンではなくとも聞いたことはあるだろう、映画化もされたあの『容疑者Xの献身』だ。
  
この作品は後に本格ミステリ大賞と直木三十五賞も取ったので、五冠と言われることもある。まあ、とにかくすごい作品だったので、三冠だろうが五冠だろうがどうぞ持って行ってくれと言わざるを得ない。未読の人は今からでもいいからぜひ読んで欲しい。
  
米澤氏の三冠は、「このミス」、「週文」までは同じだがもう一つは「本ミス」ではない。早川書房の「ミステリが読みたい!」というランキングだ。
  
こちらは『満願』という作品で、つい三年前(2015年)の出来事なのだが、いかんせん短編集であるためドラマとかにもなりにくく、一般の方は知らない人も多いかもしれない。

ちなみに「ミス読」の2018年版の一位は月村さんの『機龍警察 狼眼殺手』。「このミス」では三位。シリーズ物で読んだことがないのでまだ手を出していないが、そのうち絶対読むつもり。こちらでは屍人荘は二十位にも入っていないが、これは発売時期の問題かもしれない。
   
   
そして今回。聞けば鮎川賞受賞作品だという。ということはつまり、新人である。新人が三冠!
  
このミスの解説の一部を紹介しよう。

定石通りと思わせておいて明らかになるクローズド・サークル創出方法にしばし唖然。しかもそれが謎の根幹と密接に結びついていることが、高評価を得た一因でもあろう。加えてキャラクターに期待された役割が激変することにもびっくり。九三ページ以降の展開は絶対に秘密だ。本書を読んで授賞式に臨んだ人は、皆一様に本作を語りたがっていた。それだけ衝撃が強かったのである。

  
いやーここまで書かれちゃったら、そりゃ読まずにはいられないっしょ!
  
てことでさっそく読む。わくわく。
  
  
・・・・
  
  
うっわ、感想書きづらいなコレ。
  
  
ああ、いや、悪い意味ではございません。
なんか言及しようとするとネタバレになりそうだという意味で書きづらいのだ(笑)。
  
読んでまず思ったのが、
「このミス」がこれを1位に選ぶ時代になったかー
ということ。
  
一昔前の「このミス」だったら、十位以内には入ってもまあ一位は取れなかったろうなと思う。良くも悪くも「イロモノ」色が強い。そうだなあ、歴代一位の作品でイロモノ色が強かったので覚えているのは平山夢明さんの『独白するユニバーサル横メルカトル』(2007年)くらいか。
  
アレはホント、選評者たちの中でいったいナニが起きたんだ、というくらい不思議な一位だった。このミスだからまあ外れないだろうと思って安易に買って被害を受けた人は多かったはず。ミステリーという名のホラーである。しかもグロ。
  
それから考えると、屍人荘のイロモノ感なんて可愛いものである。しかもイロモノ自体は主役ではなく、あくまで舞台装置でしかないのだから。ストーリーの主軸はちゃんと舞台上で起きる連続殺人とその謎の方にあり、ミステリのための方程式はきちんと整えられている。
  
そう考えると、まあ別に一位でもおかしくはないのか。うううーん。
   
  

『屍人荘の殺人』を読んでモヤったのはなぜか

    
まず誤解されないように言っておくが、面白かったか面白くなかったかで言えば、面白かったんである。
  
にもかかわらず、読んだ後私がモヤった理由を述べてみたい。モヤりポイントは全部で4つある。

モヤりポイント1:本の読み方を間違えた

これね、ミスランで三冠を取ったとおり、ミステリ小説なんですよ。
  
クローズドサークルが出現して殺人が起こる。そして謎が発生する。ミステリお決まりの方程式。この方程式に焦点を当てて読めば多分大丈夫。
  
いったい何が謎なのか?
くれぐれも解くべき謎を間違えてはいけません。謎はクローズドサークルが出現して初めて謎になるのです。
  
私はココを間違えた。だからモヤった。謎じゃないものは解かれない。

モヤりポイント2:キャラが冷静すぎる!

クローズドサークル、つまり陸の孤島。完全に外部との連絡を絶たれた環境。そして起きる連続殺人事件。犯人も、殺害方法も、理由も不明。
  
普通は、怖い。こんな非現実的な状況、パニクらないほうがおかしい。しかし今日明日にでも死ぬのは自分かもしれないという、異常かつ特殊なこの環境下において、なぜか冷静なキャラたち。
  
ときに感情を爆発させるコはいるが、基本的にはみな冷静で、理性的な思考をなくさない。女性でさえも。てか、むしろ女性陣の方が冷静という。飲み込みも早すぎ(笑)
  
推理を展開させるためにはみんな冷静じゃないと話が進まないんだろうけど、ここはもうちょっと人間臭さを描写しないと、登場人物に落ち着いていられると読者も緊張感が続かないよ(笑)!

モヤりポイント3:ホワイダニットが甘い

フーダニット(誰がやったか)はまあいいや。ハウダニット(どうやったか)も、ツッコミどころはあるがまあ良しとしておこう。でもホワイダニット(なぜやったか)がいかんせん甘い。

その動機で、この複雑な状況下で、「いつやるの? 今でしょ!」ってなるか?っていうね。
  
動機が発生したそもそもの根本原因事情についても、犯人の説明で納得してねという感じでサラっと流してしまっているのが非常にもったいなかったなと思う。
  
ホワイダニットは、多くの場合、感情だ。犯人の感情。「殺人」という究極の行動に至るまでの、紆余曲折した心の動き。そこにドラマがあるからこそ納得できる。AだからBになるよという単純な方程式解では読者は納得させられない。
  
とくに今回のような、何故今このシチュエーションのこのタイミングでそれ?的な状況における犯行の場合、犯人の心の動き、動機の強さはとても重要だ。そこに納得できないと、謎の発生自体がご都合主義になってしまう。
  
まあぶっちゃけて言うと、その動機だと、どうしても「やりすぎじゃね?」感が否めない。

モヤりポイント4:探偵が合宿に参加した理由が不明のまま

探偵は言った。

「自分から事件に突っ込んで行ったことは一度もない。自分が生き残るためには事件を解決するしかなかったのだ」

と。
(※本を人に貸出中なので正確な引用できず。申し訳ない)
   
  
いやでもアナタ、今回 別荘に行く必然性はなかったですよね・・・?
  
  
主人公を誘った理由(目的)は作中で明らかにされてるけど、探偵が別荘に行こうとした真の理由が明らかになっていない。
  
探偵が合宿に参加する理由は、追求するなと主人公に条件を出している。その上で、上のセリフにはわざわざ傍点をつけて強調してあるので、何かの伏線かと思いきや、最後まで理由は明らかにはされなかった。
  
主人公を誘った理由=目的を達成するためだけなら、何も合宿に参加する必要はない。そもそもが二人とも部外者なんだし。合宿じゃないと目的が遂行できない理由なぞ、何もないのだ。
  
まあきな臭いシチュエーションに自発参加しつつも、そこで実際に事件が起こることが分かっていたわけではない。また、いざ事件が起こったから「参加させて!」と出てきたわけでもないので、そういう意味では探偵の言葉に矛盾はないのだけど・・・。
  
参加理由は「不明」なだけで別に「謎」じゃないので解かれなくても問題ないのだけど・・・。
  
ああでもモヤモヤするうっっ!!
  
このミスのインタビューを読むと、どうもこのキャラでシリーズ化させたいようだから、次作で明らかになるんだろうか。それとも伏線回収忘れ?? 教えて今村さん!!
  
  
そんなわけで オススメ度:★★★★☆ 

  
  
おまけ。読んでない人はぜひ。

  
こちらは正直オススメしない…。勇気ある方は怖いものみたさでどぞ。

タイトルとURLをコピーしました