『ホワイトラビット』を読んだ。いや読んだのは正月だったけれども。安定の伊坂幸太郎。このミス2位。そりゃ外れっこないわな。
ってことで読んだ印象を一枚の画像で表現してみようと思う。
じゃーーーん!!
そう、手品です。本編読んだ人になら分かってもらえるんじゃなかろうか。マジックの中でも定番中の定番ですね。ボールの行方を当てるヤツです。
分かっていても騙されるのが手品の魅力。伊坂氏の作品にも手品的魅力があると言えましょう。そう、伊坂ワールドに取り込まれた時点でアナタは術中にハマっているのです。
そういやこのマジックの正式名称を知らないや。まあ伊坂マジックでいいだろ(適当)。
とりあえず名称はホワイトラビット事件。たとえそう呼ぶ人が一人も居なくても、だ。だってなぜか解説者がいて、そういうんですもの(笑)。そんでもって、中心にいるのはウサギだ。
兎田が設定名らしいんですけどね。「た」は濁らないので、読み方は「うさぎた」。名前が「孝則」なのでフルネームだと「うさぎたたかのり」。言いにくいので頭の中で「うさぎだ」に勝手に改名。「ウサギ多々」でもいい(なんだそれ)。
伊坂氏の小説は、大抵がまともな登場人物ではない。っていうか犯罪者。なのでこいつも犯罪者。誘拐ビジネスってそんな儲かるのかね。オレオレ詐欺の方がコスパ良さそうですけど。
で、その誘拐ビジネスやってる当の本人の妻が誘拐されるという、なんともなんともなところから事件はスタートします。
もちろん、誘拐したのは誰なのか、そんな謎を解くとかいう当たり前の展開は伊坂小説では有り得ません。妻を誘拐したのは身内です。犯罪組織の内部犯行です。
実はこの内部犯行の前にもうひとつ別の内部犯罪(?)がすでにありまして、よくあることですが(適当)、組織の金をチョロまかしたヤツがいたんですね。オリオリオとかいうふざけたあだ名の自称コンサルタント。で、妻を人質にとられてしまったウサギさんは、なんとかして期限までに組織の金をちょろまかしたこの自称コンサルタントのオリオオリオを探し出さなければならないと組織から脅されます。じゃないと妻が殺されます。
うーん、こうやって書くと結構重苦しい展開のハズなんですが(笑)。ミョーに軽快な語り口の、あの伊坂節で、淡々とミッションは進むのです。
さて話はうって変わって別の事件のお話に。詐欺師の家からとある名簿を盗もうと企む泥棒三人組がおりまして。その中の一人が、伊坂作品ではおなじみの、泥棒兼探偵のあの人です。そしてもはやお約束通りにトラブル発生。
さてもうひとつ、お話混ぜちゃいましょうか。あーあー。聞こえてますか。こちらの現場では立てこもり事件が発生しております。でも何か様子がヘンです。普通なら立てこもられた家族は怯えまくりです。何でもいいから早く解放されたい一心のはずです。しかし何かのきなみならぬ事情を抱えている様子で、どうも挙動不審です。
さらにこの立てこもり事件のための特殊捜査班を指揮する警官、夏乃目さん。この人にもどうやら重〜い過去があるようです。もう何がなんだか分からなくなりました。
いくつもの事件が、軽快な語り口によって淡々と語られていきます。あれ、今どの事件のお話なんだっけ? ちょっと目を離すとすぐにボールを見失っちゃうので注意しましょう。しかし巨匠は我々がボールを見失ったことさえも気づかせずに、まんまと錯覚のワナにハメるのです。これぞ伊坂マジック!
著者後書きにですね、
籠城物、人質立てこもり事件の話を今までにいくつか書いてきたので、このあたりでその決定版を、と取り掛かったものの、はじめに描いていた、硬派な犯罪小説、警察と犯人との緊迫した攻防戦、といったものにはあまり、近くことができませんでした。
とあるんですが、
> 硬派な犯罪小説、警察と犯人との緊迫した攻防戦
> 硬派な犯罪小説、警察と犯人との緊迫した攻防戦
> 硬派な犯罪小説、警察と犯人との緊迫した攻防戦
・・・うん、近づくどころかむしろ遠ざかってないですか。
まるでさそり座から逃げるオリオンのようです。
これ読んでレ・ミゼラブルを読み返したくなった人はお仲間です。
こちらはレ・ミゼラブル本編読破に挫折した人向けのあらすじ本。
本編で読むと背景の描写とか長ったるくて超ウザイけど、こちらの解説読むとすんなり頭に入ります。新装版はパリ市外の地図がついてるのでオススメ。
ちなみに冒頭の手品のイメージ画像にはちゃんとオチがあってですね。
この「ヤラれた〜!」感がまんまホワイトラビットなんだよなあ。味わいたい人はぜひ読もう。
関係ないけどボールがどこに入っているかをちゃんと当てる猫が可愛いので貼っておく。
ここまで連続して当てるのはやはりご褒美のチカラ?